たまりば

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迷子のわたし。

どこで迷子になったかわからない。

そんな毎日が何年続いたかわからない。

あっちこっちとさまよううちに自分が今どこにいて、何者であるかもわからない。

わかっているのは、それまで積み上げてきた何かが壊れて、破片が散らばっているという現実だけだ。

さんざん考えた挙句、その破片をひろいあつめに行くことにした。


しかし、それが間違いの始まりでもあった。

いろんな大きさのガラスの破片を拾って歩く。
小さいものもあれば、びっくりするぐらい大きいものもある。
徐々にパズルのように破片をつなげていくと、衝撃で涙を流し、またそれを壊してしまう。

「なにしてんだろう?また最初からじゃないか?」

しばらく泣いてから自分にそう言い聞かせて、また破片を集めに歩き出す。

・・・その繰り返しが何年も続いているうちにとうとう探すのをやめてしまった。

「もういいじゃん。ここにずっといれば・・・このままでも生きていけるよ」

その立ち止まった場所が、「自己チュー」という山のてっぺんだった。

ここまで集めてきた破片を山のてっぺんからすべて投げ捨てた。


「もう、何もいらない」


そう言って、私は座り込んだ。


静かな山のてっぺん。他人の声もモノの音すらしない。
天気はいつでも雨。

「すべて雨の中に消えちゃえばいいんだ。傘なんかいらないよ」

下の世界がどんな天気なのかどんな季節なのかなんて知ったこっちゃない。

晴れることのない自己チュー山のてっぺんに私はただ座って、一寸先も見えない景色を毎日眺めていた。

投げ捨てた破片を再び取り戻そうと歩き始めることなんてまだ考えてもいない。
いや、考えることすらなかった。

そう。あいつが私の目の前にあらわれるまでは・・・。


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    Posted by nyatarodreamsmallworks at 20:22│Comments(0)まえがき
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